かおり風景100選・東北②【南部町長谷ぼたん園】
2001年度に環境省が広く一般に呼びかけて選定し、紹介している全国各地の100事例です。
環境が嗅覚を通じて人に影響することについて、単に悪臭公害を防止することだけに着目するのではなく、日本の自然や伝統・文化に係わる「よいかおり」を保全することを通じて、環境の快適性を確保・創造することを目的としています。
環境省のHPを中心に、かおり風景100選に該当する自治体からの抜粋などを紹介させていただきます。
南部町長谷ぼたん園
初夏にぼたんの大輪が咲く。
ふるさとづくりの一環として、町で整備し、現在3.3haに130種8,000本のぼたんが植栽されている。
ぼたん園開園期間には、遠く残雪をいただいた八甲田山を背景にぼたんを観賞できる。
園内の管理は町婦人会や老人クラブによる除草作業等が行われている。また、ゴミの持ち帰り運動を推進している。本年5月に「なんぶフラワーフォーラム21」を開催し、花を活かしたまちづくりを一層推進している。
所在地は青森県南部町、かおりの源はぼたん、季節は5月下旬~6月上旬
とあります。
(環境省:https://www.env.go.jp/air/kaori/ichiran.htm)
やすらぎと癒しの帳
名久井岳県立自然公園の中腹に位置し、八甲田連峰を見渡すことができる長谷ぼたん園。
この長谷ぼたん園は、隣接する恵光院の檀家一行が、総本山である奈良県桜井市の長谷寺からぼたん苗を譲り受けたのをきっかけに、昭和54年から南部町がふるさとづくりの一環として、「町民1人1本」を合言葉に整備に取り組んできたものです。
現在、園内には、中国では「花の王」とも呼ばれているぼたんが130種、8,000本植裁されており、春の到来を告げる桜に続き、色とりどりに咲き競うぼたんの美しさは東北随一とも称されています。
(青森県 南部町観光協会:http://nanbu-kanko.net/)
牡丹
ボタン属の学名は「パエオニア」といい、ギリシャ神話の「医の神」であり「癒しの神」である「パエオン」に由来しています。
理由は、パエオンがボタン属の何らかの種を、はじめて薬として用いたとされたからと言われます。
中国原産で、日本へは奈良時代に弘法大師が持ち帰ったとの説もあるようですが、同じく奈良時代に薬用として入ってきたのが最初ではないかとも言われています。
「枕草子」「蜻蛉日記」などに牡丹の花が描かれているところから、平安時代には花を観賞していたと思われ、鎌倉時代にはお寺や庭園に植えられ江戸時代になると本格的に栽培されたくさんの品種ができました。
また、牡丹は中国の国花であます。
新年を祝う花として中国の上流階級では珍重され、花海棠とともに最も愛好されており、中国名の「牡丹」を音読みして「ぼたん」の呼び名になったとされます。
取合わせが良く、豪華な図柄なものの例えとして、「獅子に牡丹」があります。イノシシを獅子と見立てイノシシ鍋を「牡丹鍋」と呼ぶようになったそうです。
牡丹の別名を「名取草」と呼ぶようです。
室町期の歌学書「蔵玉和歌集」の中で、ある男が意中の女が他の男へ心変わりをしたと思い、嫉妬に荒れ狂った経緯から、女の心を奪い取ってしまうほどに魔力をもつ牡丹であることに因んで、汝(な:おまえ)を取り(奪い取る魔力の)草、すなわち「名取草」と呼んだ話に由来するようです。
また、このほかに別名として、
深見草:紅の色の深さを称えて、
二十日草:咲いてから散るまでずっとそばに居つづけたら20日経った、
夜白草:天人が降りて跳ねるほどの夜も白さ引き立つ花盛り、
などもありました。
牡丹の美しさ
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」(芍薬のように風情があり、牡丹のように華麗で、百合のように清楚)という女性の美しさを形容する言葉が有名です。
因みに牡丹が「木」であるのに対し、芍薬は「草」として扱われます。
牡丹は冬に葉っぱは落ちるものの茎は枯れず残り、表面は木のようなざらざらした質感になります。
芍薬は冬になると茎も葉っぱも枯れて、根と芽の部分だけ残るそうです。
「牡丹散って 打ちかさなりぬ 二三片」与謝蕪村
牡丹は初夏(5月初旬)に大輪の花を咲かせ、その姿は、画題としても好まれ「花の王」と称される程でした。
この句は、「咲き誇っていた牡丹の花。いつのまに散ったのか、地面に2枚3枚と花びらが重なり落ちている」との表現から、
「低い枝の先には、今にも崩れ落ちそうな危うい花の塊があるが、ひっそりと静かに花弁の散るさまを感じさせ、花びらは散ってもまだみずみずしいままである。」
という牡丹の豪華絢爛な美しさを、散り落ちた花弁によってとらえたところに特徴があるとされています。
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