チベットのお香
チベット仏教とヒマラヤ
ヒマラヤは、世界の屋根とよばれるエベレスト山(8850m)をはじめ、8000mを超える14の山、7200mを超える100以上の山で構成されます。
ブータン、ネパール、インド、チベット、パキスタンの5つの国に跨る山脈から、
ガンジス川、インダス川、黄河、長江などの大河の流域、
そして海に至るまでの広大な地域であるが故に、
様々な気候、地質が存在し、豊かで複雑な生態系が営まれている特別な場所だと言えます。
ヒマラヤの山々はその全てが古来より聖なる山とされています。
そこは神々の住んで山と考えられ、ガネーシャー、パールバティなど神々の名にちなんだ地域もあります。
山が聖なる場所と考えられる例は日本にもあります。
日本人にとって特別な感情や想い入れがあり、荘厳で圧倒的な存在である富士山は、太古の昔から日本人の自然観や文化に大きな影響を与えてきました。その結果、2013年に「富士山=信仰の対象と芸術の源泉」として世界文化遺産に登録されました。
また、奈良県の大神神社のように三輪山そのものを御神体としている神社もあります。
この様に、山は神聖で特別な場所として、様々な地域でも捉えられてきました。
そしてヒマラヤも間違いなく、その地域に暮らす人々にとって、神聖な山として存在し続けてきたと思います。
そのような地域で信仰されてきたのがチベット仏教です。
高地で生活する人々にとって、中国やインドの文明を全て寛容に受け入れる訳ではなく、
干渉に対抗しながらも、取り入れるべきものは取り入れ、厳しい自然環境に適応しながら独自の社会文化を築いています。
そのには低地に蔓延る経済第一主義とは一線を画す文化が息づいており、
お金では解決できない部分を仏に寄り添い、時にすがりながら生き抜いて行く信仰心、
宗教観が根底にあると思います。
チベット仏教寺院から僧侶を招き、災いを追い払い、幸せを呼び込むご祈禱もいたるところで目にされるようで、チベット仏教を篤く信仰し、祈りを捧げるという姿は日々の暮らしの一部分なのでしょう。
浄化と癒し
チベット仏教で唱えられている「マントラ」(神さまに届ける祈りの言葉・真言)に
”オム・マニ・ペメ・フム(Om・ Mani・ Padme・ Hum)”があります。
「白蓮華の宝珠よ、幸いあれ」という意味します。
チベット仏教においては、慈悲の化身である観音菩薩のこの真言を唱えることによって、悪業から逃れ、徳を積み、苦しみの海から出て、悟りを開く助けになると信じられているそうです。
このマントラの意味を見ていきましょう。
”オム(Om)”:私たちの不浄な身体・言葉・思考とともに、高尚純粋な釈迦の身体・言葉・思考を表し「悟りの道を開いて純粋な境地に到達したとき、過去の不浄から負の属性を取り除き、不浄な身体・言葉・思考も変わることが出来る」と釈迦は説いていて、その意味が集約されています。
マニ(Mani):宝石を意味し、秩序・慈悲・他者への思いやりなど悟りを開くための要素を表します。「宝石が貧困をなくすことができるように、利他主義的な悟りの境地は、貧困・孤独を取り除くことができ、宝石が私たちの望みをかなえてくれるように、利他主義の心によって悟りを開き、私たちの望みは実現される」とダライ・ラマは説いているそうです。
ペメ(Pedme):蓮を意味し、知恵を表し、泥の中に生えていても泥に染まらない蓮は私たちを矛盾から救い出す知恵の本質を示しています。
フム(Hum):分離できないものを意味し、秩序と知恵が調和することにより至る純粋なる境地を表します。
「祈りを捧げる時に、欠かすことのできないものが「チベット香」です。
とても大切なものと考えられていて、ヒマラヤを中心とする文化圏の中ではチベット仏教と共に受け継がれ、伝播されてきた伝統的な自然香です。
神へ祈りを捧げる際、途切れることなく場を浄化し、個人の深い瞑想を助けるとされ、寺院では毎日焚かれています。
チベット香とは
チベットのお香は、ネパールやチベットに古代から連綿と伝わるレシピに基づいて、天然素材からなる成分と配合で調合されています。
このお香には、様々なエトスが含まれています。
チベット香は、インド伝承医学のアーユルヴェーダ、中国医学の影響を受けながら独自に発展し、古来より人々の健康に貢献してきました。
チベット医学では、「地・水・火・風・空」の五大元素に基づく毎日の健康のための理論が体系化されています。
お香は、人間を取り巻く環境、他の生き物との調和までも含んだバランスを重視しているのが特徴である「チベット医学」の要素のひとつでもあるようです。
ヒマラヤ山脈周辺地域の山々に自生している天然のハーブ、木の根、天然の香料などの現地で良薬とされている自然から採取できるもののみを用いて作られているため、お香を焚き自然由来の薬草を口から取り込むことで、治療の初期段階の「優しい治療」として用いられています。
それぞれの文化圏で異なるお香の役割。
アラブでは、身に纏う香りとしてアイデンティティの一つとしての役割を果たしてきました。
祈りの場、現在もお祝いの席、おもてなし、などにも愛用されているお香、
試してみませんか?
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