かおり風景100選・関東①【偕楽園の梅林】
偕楽園の梅林
三名園の一つである偕楽園は、正月から彼岸過ぎの長い間にわたり梅のかおりを感じることができる。
梅は100種3000本。
周囲の樹林地を保全し、親水性のある歴史的景観形成など総合的な周辺整備を進めている。
茨城県水戸市で、かおりの源は梅、12月下旬~3月末に楽しむことが出来ます。
(環境省:https://www.env.go.jp/air/kaori/ichiran.htm)
2001年度に環境省が広く一般に呼びかけて選定し、紹介している全国各地の100事例です。
環境が嗅覚を通じて人に影響することについて、単に悪臭公害を防止することだけに着目するのではなく、日本の自然や伝統・文化に係わる「よいかおり」を保全することを通じて、環境の快適性を確保・創造することを目的としています。
環境省のHPを中心に、かおり風景100選に該当する自治体からの抜粋などを紹介させていただきます。
偕楽園
江戸時代、水戸藩九代藩主・徳川斉昭(なりあき)によって造園されました。
斉昭が藩主就任後に初めて水戸に国入りし、西に筑波山を望み、南に千波湖を接し、そして城南の景色を一望できる景観に感動し、天保4年(1833年)に構想されました。
そして、その良さを尊び、さらに引き立たせるため、春に先駆けて咲く梅の樹を数千本植えて、国中の人々が楽しめる場となるよう考えました。
偕楽園の名前には、領内の民と偕(とも)に楽しむ場にしたいと願った斉昭の想いが込められています。
そして、次々に独創的な工夫をこらし、特に好文亭楽寿楼から展望される梅林、桜山、水田、茶園など周辺の景観も庭園要素として取り込んだ広大な全体像を構想し、天保12年4月には造園工事にとりかかり、翌13年7月1日には開園、同月27日に公開日を迎えました。
その後、幕末の志士なども訪れ、明治維新後は日本初の指定公園の一つになり、梅の名所として全国の人々に親しまれました。昭和20年8月2日の水戸空襲では好文亭をはじめほとんどの施設が消失し庭園は荒廃しますが、戦後10年を経て再建され現在も美しい水戸の名所として親しまれています。
現在でも、ウメの公園として全国に知られ、偕楽園では、約100品種、3000本の梅が咲き誇ります。
弘道館では、約60品種、800本の梅園となっており、「水戸の梅まつり」が毎年2月中旬~3月下旬に開催されます。
園内にあるウメの中でも、花の形、香り、色などが優れている、ウメを「水戸の六名木」と呼んでいます。
また、偕楽園は、「陰」と「陽」の世界観を意識して作られているとも言われています。
陽が降り注ぎ、早春にはかぐわしい梅の花が咲き誇る「陽」の世界と、幽玄の世界のように、しっとりした静けさが心地良い「陰」の世界。
そのコントラストを楽しむのも、偕楽園ならではの魅力のひとつとなっています。
徳川斉昭
徳川斉昭(烈公)は、寛政12年(1800)に水戸藩第七代藩主治紀の三男として江戸の小石川藩邸で生まれました。
長く部屋住みの身であった斉昭は、30歳で藩主に就任すると、すぐに藩政改革に取り組み、倹約の徹底、軍制の改革、追鳥狩、藩内総検地などを実施しました。
のちに水戸藩天保の改革と呼ばれた諸政策の中で、特に力を注いだのが、藩校弘道館の建設と偕楽園の造成でした。
斉昭は水戸藩主として、水戸藩天保の改革をはじめ、医学・薬学への高い関心による痘瘡やコレラ予防などに卓越した指導力を発揮しました。
また、一時は幕府の特別職に就くなど、一国の運命を担った政治家としても歴史に名を残しています。
これらの政治家としての手腕のほかにも、弘道館や偕楽園の設計、作陶や多数の著作など、文化・教育に関しても独創的な考えで水戸藩を主導しました。
斉昭は、水戸藩の藩士は、弘道館で文武をしっかり修業した後には、心身をゆっくり休めて鋭気を養ってほしいと考え、一対の教育施設として偕楽園を創設しました。
その趣旨を記した「偕楽園記」には「余が衆と楽しみを同じくするの意なり」とあり、藩士のみならず領内庶民への開放も目的としていたことが示されています。偕楽」とは、中国の古典である『孟子』の一節である「古の人は民と偕に楽しむ、故に能く楽しむなり」からとっています。
庭園構造における演出(「陰」と「陽」、周辺の景色を取り込む「借景」)や独自の発明(玉龍泉や吐玉泉)など、園内で見られる様々な工夫は、一つひとつが、斉昭の深遠な思想が具体化された作品とも言えるでしょう。
さらに、園内にある”偕楽園記”の石碑の裏側には、6か条の入園の心得が”禁條”として刻まれていることから、公共の利用のためのルールまで示された近代の公園に近い性格をもつ庭園とも見られています。
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