「鼻」に纏わる日本神話の歴史考?①
八岐大蛇(ヤマタノオロチ)退治で有名な、神話の中のスーパーヒーロー
イザナギが禊を行い、「鼻」からスサノオが生まれる話について話を広げてみたいと思います。
このスサノオという神様。
暴れん坊だけど頭がよく正義感が強い神様とされ、暴風の神や、厄払いの神様としても信仰されています。荒々しい乱行で、天上界から追放されるものの、ヤマタノオロチ退治に成功するなど正義感が強く知恵者としての一面もあるため武の神として崇められています。
天上界を追放されるに至った悪行は、田畑を破壊するなど農耕に対する罪があり、農耕と相容れない神と考えることができます。
退治されたオロチについて、蛇は水神や山神でとして雨・水をつかさどる神とされ、雨は時として雷をともない、稲光が蛇の形に似ているため雷神ともされていました。つまり、稲の成育には水が必要なため、オロチ=農耕とも言われます。農耕を覆すイノベーションとは、朝鮮半島からの「鉄の伝承」を意味しているともいわれ、製鉄の神と結び付けられています。
オロチを退治し、須賀(雲南市)の地を気に入ったスサノオは「我が御心すがすがし」といってここに須賀宮(現在の雲南市の須我神社)を造り、「八雲(やくも)立つ 出雲八重垣(いずもやえがき) 妻ごみに 八重垣作る その八重垣を」(盛んに沸き起こる雲が八重の垣をめぐらしてくれる。新妻を守るために八重垣をめぐらすことよ。あの素晴らしい八重垣よ)との日本最古の和歌を詠んだことから和歌の神ともされています。
五穀の誕生、食物の神
話を少し遡ってみると、多面性の強いスサノオの荒ぶる方の話が古事記にあります。
スサノオが天上界を追放され、下界に行ったとき最初に出会った神様がオオゲツヒメという神様で、このオオゲツヒメに食料を求めました。この時、オオゲツヒメはスサノオに快く様々な種類のご馳走を振る舞いましたが、オオゲツヒメがどの様に食事を出してくれたのか気になってしまうところが、スサノオなんでしょうね。
調理する様子を見てしまったスサノオは、オオゲツヒメが自分の体の穴である口、鼻、陰部、お尻などから食料を取り出し、料理していたことを知って、「こんな汚いものを食わせたのか」と腹を立て結果としてオオゲツヒメを殺害してしまいます。
すると、遺体となったオオゲツヒメの頭から蚕、目から稲、耳から粟、鼻から小豆、下半身から麦、尻から大豆が生え五穀が誕生します。
オオゲツヒメの遺体から生まれた穀物が、食物の起源とされ、生きている以上、何かを食べるという行為は決して避けては通れることではなく、食べるという行為は命をいただき、そして生を終えた者は土へと返り、新たな命を育むという「命の循環」を司る女神とされています。
このような、殺された女神の身体から食物が生じるという話は、インドネシア、メラネシア、ポリネシアからアメリカ大陸にかけての広い地域に分布しるそうで、これらの神話を、インドネシアのセラム島の神話の主人公の名にちなんで、「ハイヌウェレ型」と呼ばれます。
オオゲツヒメの話は、日本列島に農業が根付き成熟してきた事、つまり農業の発展を現わしているともいわれます。
オオゲツヒメが祀られている有名な神社は徳島県にあり、旧国名は阿波です。阿波の由来は「粟」であり、大和朝廷に食料を送り届ける大事な土地だったとされます。
【続く】
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